都立高一般入試問題分析
都立高一般入試問題分析
東京都立八王子東高等学校
都立高一般入試問題分析
国語
1 漢字(読み) 2 漢字(書き) 3 小説文 4 論説文 5 現古融合文
全体の構成はほとんど例年と変わらず、大問5題、小問数は25問。1・2の漢字はやや難化。日常的な漢字の習熟はもちろん、三字熟語、四字熟語の幅広い習得は必須である。3の出典は恩田陸『なんとかしなくちゃ。青雲編』(約3500字)で、独特の家のしきたりに臨む主人公と家族との交流が、多彩な心情描写とともに描かれている。登場人物は多いが、展開の把握は容易。選択問題が4問、記述問題が1問で、いずれも難度は高くなかった。4の出典は多木浩二『生きられた家』(約4000字)で、西洋と比較した日本の家、部屋の機能について論ずる文章である。本文は読みにくいが、展開を理解し、要旨をうまく読み取る力が求められる。選択問題4問はやや難。240字の作文については昨年度と変わらなかった。5の出典は復本一郎『俳句と川柳「笑い」と「切れ」の考え方、たのしみ方』(約2500字)で、俳諧と笑いの関係性について論じている。選択問題が4問で抜き出し問題が1問、どれも比較的容易なものだった。全体的な難度はやや難化といったところで、近年の都立自校作成問題校の過去問を中心に、スピードを常に意識した読解演習の積み上げが重要である。選択問題では選択肢の選択基準を明確にすること、記述問題では題意の把握と見やすい構成を心掛けること、それぞれ意識して練習を重ねることが不可欠となる。
数学
1 小問集合 2 関数 3 平面図形 4 空間図形
大問4問、小問13問の問題構成。設問数は昨年度と同じ。1〔問1〕は平方根の計算、〔問2〕は二次方程式の計算、〔問3〕はサイコロ2個の確率の計算、〔問4〕は頂角120°の二等辺三角形の作図。2は二次関数の問題。〔問1〕については例年同様、二次関数と一次関数の変域の一致から式を求める問題となっている。〔問2〕は三角形の面積比を求める問題。実際に面積を求めるよりは、高さが同じ三角形なので線分比が面積比と等しいことを利用したい。〔問3〕は等積変形を利用する問題。3は平面図形の問題で、昨年度と同様、正方形を題材にした問題である。〔問1〕は辺の長さを求める問題であったが、図形の対称性を考えて適切な補助線が引けるかがカギ。〔問2〕は相似の証明の問題。対応する辺の長さを求めて、2組の辺の比とその間の角はそれぞれ等しいことで証明する。都立でこの相似条件を利用する問題は大変珍しい。〔問3〕は面積を求める問題。この問題も適切な補助線を引くことが重要。また、三平方の定理や三角定規の辺の比で長さを求める作業に慣れておく必要がある。4は空間図形で、三角錐についての問題である。〔問1〕は表面積を求める問題、〔問2〕は体積を求める問題。どの面を底面としてとらえるかが重要であった。〔問3〕は最短距離を出す問題。全体的な対策としては、本校の過去問はもとより、他の都立自校作成問題校の過去問も解くことで対策を積みたい。
英語
1 リスニング 2 対話文 3 長文読解
大問3題構成。2の対話文の文章量は約1,300語で、昨年度とほぼ同じ。小問数も9問と昨年度と同じで、文整序の問題が2問、整序英作文が1問、内容一致が1問、文の選択問題3問、抜き出し問題1問、そして英作文問題が扱われており、問題構成もほぼ同じであった。特に選択問題は否定文が多く、選択肢を丁寧に訳す必要がある。また、英作文は「時間の使い方に関するあなたの考え」を自分の経験(具体例)に触れながら40字以上50字以内で書くものであった。時間を有効に使った経験が書けるとよい。3の長文問題の文章量は約1,200語で、昨年度とほぼ同じ。小問数も10問と昨年度と同じで、文の並び替え問題が1問、整序英作文が1問、単語の並べ替えの問題が2問、適語選択が2問、適文選択が3問、内容一致が1問と問題構成もほぼ同じであった。内容は、東京のある高校に赴任したスミス先生が学校新聞に書いた記事、という形で日本の自動販売機の良さや面白さについてエッセイ形式で書かれている。接続詞、形容詞、副詞、熟語といった幅広い語彙力が必要とされた。
全体を通じて、都立共通問題に比べ、対話文が約2倍、長文が約1.5倍と非常に語数が多いので、速く、確実に読む力が必要とされる。単語もGRIT2500のSTAGE4〔1700語〕までは必須であり、読み・書きができ、訳がすぐに思いつくよう練習を積んでおく必要がある。
理科
1 小問集合 2 小問集合(レポート形式) 3 地学分野 4 生物分野 5 化学分野 6 物理分野
例年通り、大問6題、小問 25 問の出題。記述式の問題が例年より多く、2問出題されている。1は基本知識を問う小問6問。化学分野(化学反応式・原子)と生物分野(動物の分類・人体)から2問ずつ、物理分野(電流)と地学分野(気象)から1問ずつの出題。2は例年通り、レポートを題材とした分野横断的な総合問題。今年度は、岩石を題材として、「化石」「化学変化と質量」「光の性質」「生物どうしのつながり」からの出題だった。3では太陽と地球の動きに関する実験観察問題。実験結果からわかることを説明する記述問題や図解問題を含む。過去に類似の問題が出題されている。4は植物のはたらきに関する実験観察問題。実験操作(顕微鏡の扱い方)と対照実験、植物の光合成と呼吸のはたらきについての基本的な問題が中心であった。5は水溶液とイオン、溶解度に関する実験観察問題。基礎的な知識と溶解度や質量パーセント濃度についての理解が求められる。与えられた資料から読み取れることを根拠として、考察結果を説明する問題が新傾向。6は力学的エネルギーに関する問題。実験結果を分析・判断する力が問われる。実験や設問の条件設定を正しく把握することが正解へのポイント。
全体的に選択問題が中心で、基本的な知識と理解が問われる。計算問題は基礎的なものも含めて例年4~5題程度出題されているが、必要な数値を整理して取り組めば解決できるので、十分に練習して臨みたい。実験結果や図を分析し、資料から判断して考察結果を説明するなどの記述対策は必要ではあるが、あまり多くの字数を要求するものではない。過去問に目を通し、模範解答の文字数を感覚的につかんでおこう。
社会
1 小問集合 2 世界地理 3 日本地理 4 歴史 5 公民 6 総合問題
1は地理・歴史・公民の各分野から1問ずつの出題。〔問1〕は地形図と写真・文を見比べ、正しい地点を見分ける問題であった。〔問2〕・〔問3〕はベーシックな知識問題であり、確実に正解したい。2の世界地理は、例年通り地図や資料、様子を表した文章を使った問題が出題された。昨年度同様、キーワードがわかりやすく、解きやすかった問題といえる。3の日本地理は、〔問1〕・〔問2〕ともに地形と産業を合わせた出題がなされており、基本的だが幅広い知識が必要となる。近年注目されているコンパクトなまちづくりからの出題があったが、資料を比較し、丁寧に考えていくことで解答を導ける問題であった。4の歴史は、時代順に並べ替える問題が例年通り出題されたが、4つそれぞれを全て当てなければならない完答問題の増加と、記述問題も出題されたため難度が上がったといえる。5の公民では例年どおり〔問1〕で基礎的な知識問題が出題された。以降の記号問題は表やグラフの読み取る力と、知識を組み合わせて解いていくことが必要となる。6の総合問題は、国際社会・世界地理・近現代の歴史を組み合わせて出題される傾向がある。本年は近年注目されている SDGsからの出題もあった。都立で出題される環境問題については公民だけでなく、世界地理や近現代史からの視点も取り入れて勉強することが必要である。
国語
難度は例年並み。出題構成や問題数、記述量など概ね例年通りと言えるだろう。
文学的文章の問題はやや易しくなったものの、論説文や現古融合文、漢字の出題について大きな変化はなく、本校の対策を十分に積んできた生徒にとっては力を発揮できたものであると考えられる。
数学
難度は例年通り。大問2の関数、大問4の空間図形に関する問題は典型的なパターン問題なので解きやすかった。大問1は例年より1問少なく、4問の出題。他の大問は3題の出題で例年通り。関数は昨年度同様、等積変形を利用して解く問題。確実に得点したい。大問3の問2は証明と面積の差を求める問題。これと、大問4の空間図形の問題の出来で合否が決まるといえる。
英語
昨年度の問題と比べ、難度にあまり変化はなかった。文章量に関しても昨年度同様、大問2の対話文が4ページ、大問3の説明文が2ページ半であった。文章量は多いため、速読と精読をうまく使いながらテンポよく解き進める必要がある。整序英作は特に難しい知識を要するものではなく、文脈に合わせて素直に解くことで正解できる問題になっていた。条件英作文に関しても、昨年度は本文のキーワードをよく理解していないと書けない作文だったが、今年はテーマに対して意見を述べる形となったため、得点すべき問題だったといえる。
ただ、「自分の経験に触れながら説明する」というように自らの体験を書く形式は昨年度と同様だった。
社会
出題形式は例年同様大問6題での出題となった。完答問題は昨年よりも1問減少した。
大問1の問1は、地形図の高低差を選ぶ問題となり、例年と比べ難化した。他の2問は例年同様の難易度である。
大問2の世界地理は近年の難易度の高さがなく、キーワードも拾いやすかったため、易化したと言える。
大問3の日本地理も例年と比べてヒントが見つけやすく、易化したと言える。記述問題では、今まで出題されてこなかったイラストを使用した資料が出題された。
大問4の歴史は例年同様の難易度であった。問3は、近年では出題されてこなかった、並べ替えに加え、略地図からも選ぶ問題が出題された。
大問5の公民は例年よりも難化した。問2は掲載されている資料だけでは解答を見分けにくく、問3や問4は固定資産税が地方税であることや株式会社の概念を知らない生徒も多かっただろう。
大問6の総合問題も例年よりも難化し、知識や柔軟な見方が必要とされていた。
理科
問題構成は例年通りの大問6題構成。例年大問3以降は、必ず地学・生物・化学・物理の順に並び、そこで取り上げられなかった単元から独立した小問が大問1、2に並ぶ。
昨年度の大問1は5問だったのに対し、今年度は6問となった。生物・化学がそれぞれ2問ずつ、地学・物理がそれぞれ1問ずつ出題された。
大問2は例年通り、生徒のレポートに関する問題が出題された。「極地の研究」をテーマにしたレポートに関連させて、等速直線運動(物理分野)、海水の密度と塩分濃度(化学分野)、カエルの発生(生物分野)、白夜(地学分野)という内容からの出題。海氷の塩分濃度に関する問題に新味がある。
大問3は地学分野で気象からの出題。〔問1〕が、毎年1問だけ含まれる記述問題であった。しかし、金属製のコップの表面の温度が少しずつ下がるようにした理由」は、高校入試の定番であり、受検生にとって特に脅威ではない。
大問4の生物分野では消化と吸収からの出題。昨年度は4問だったのに対し、今年度は3問。内容は2020年度と酷似し、過去に出題されたものばかりであった。
大問5の化学分野では、塩化銅の電気分解を軸にした基本的な問題。2018年度出題のものと似ている。なお、今回は計算問題が出題されなかった。
大問6の物理分野では、電流・電圧・電力からの出題。出題形式で特筆すべきは、問2の選択肢の数が6つ、問3の選択肢の数が5つという、「いつもの4択」ではないものがあった点である。
総じて、過去の出題傾向から著しく外れた問題は出題されていない。過去5年分の出題内容を研究することで確実に対応可能である。ただし、近年になって教科書に加わった内容(ダニエル電池など)はこの限りではないので要注意。